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参道は時代の鏡、石切さん(石切劔箭神社)の場合

石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ),ご利益,参道

時代にしなやかに対応する参道

一般的に参道は社寺に導く参詣道で、祭りなどはもちろん正月ごとに大いににぎわう。そこには社寺にまつわる逸品やテキヤ、食堂などが集まるわけだが、現在はさびれてしまった参道も少なくない。

私の家系は戦後大阪に出てきたため、氏神を持たず、本社の旧本殿を上之社に移し、1972年(昭和47年)に復興した石切さん(トレンドだったのだろう)に頻繁に祖母と通った。そこではお百度を知ったり、白馬にエサをやったり、なによりもおどろおどろしい参道の雰囲気が焼き付いた。いわゆる衛星博物館的な…

写真はとある取材で訪れた石切劔箭神社、参道で2007年のもの。

石切劔箭神社(いしきりつるぎやじんじゃ),ご利益,参道

平成19年も、あか抜け、賑わいがあった

子どもころ祖母からは「でんぼ(腫れ物)の神様」と教わった。太刀(石切丸)御祭神の御神威で、なんでも取り除いてくれると。2007年に訪問したときには「劔箭」という文字が加わったことが不思議だったが、どうやら「でんぼ」が「がん」まで拡大解釈され、この社名変更はそのころのことだという。

そのため、参詣客は昔通り、坂道の参道のにぎやかさも変わりはなかった。神社のご御利の解釈は昔からあり、船上安全祈願から交通安全祈願へ変わったり、宝くじ当選者が氏子から出たため、立身出世祈願になったり…決して珍しいことではない。ただ、神主さんの意向だけではなく、座老さんのなかにマーケティングたけた方がいるように思われる。かくして石切さんは現在も「がん」によって、人であふれているであろう。

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平成5年「劔箭」がつく前の石切さん

さて、ここからは兄の写真。名古屋在住のお友達が大阪の面白いところを案内してほしいということで、私が案内役を買って出た。1993年の出来事で、まだ「でんぼの神様」の雰囲気が見て取れる。年末だったので人出は少ないが、大いにお友達には喜んでいただけた。おどろおどろしい参道の雰囲気を面白がっていただけたのだろう。

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参道は民間医療のテーマパークか?

高麗人参を代表格として、ほんまかいそれ?と突っ込み所満載の看板、展示物が泣かせる。猪やアルマジロ、奇怪なはく製も数多く並ぶ。カミさまのご加護がこもっている、この店でないと効き目はない!と言わんばかりである。もちろん、すでに対象の病は「でんぼ」だけではなく、でんぼ同様に、なかなか医者に見せてもすっきりしない症状が対象として広がったようだ。

1993年だから、バブルの夢も冷め、慢性的な病に悩む方々も多かったに違いない。

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ひふ、みみなり、吐血、しびれ、癇癪…

カットの人体模型まであった。これは幼少のころ、昭和40年代後半から生き残っていたものだ。ショーケースがこれで、店内に入れば案外性的なお悩みに関する展示に一変していた。

というか、そんなお店に小学校低学年で立ち入っていた自分が恐ろしい。「飴ちゃんあげるから、そとへもどって」と優しく追い出された記憶もある。こういった風情は現在ではなかなか確認できないが、よく考えるとテレビ通販と似た「きな臭さ」がそれに代わったのかもしれない。

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勝ち残った参道とは?

時流に合ったコンセプトが必要なのだろう。なかなかリアル店舗そろって成し遂げるというのは困難だが、米子の鬼太郎ロードなどは奮闘している部類ではある。神社萌えでは参道はさほど賑わいを生まず、コンセプトに沿った商品販売を行う個別店舗だけが注目されることになる。

過去の石切さん参道を振り返ってみたが、ネット通販に押される百貨店も同様の悩みを抱いている。鳥居や祠(駅前の大型施設)といった参詣対象はあるのに。

さて現在の石切さんはどうなのだろう…強固な岩をも切り裂き、貫き通すほど偉大な石切丸は、しっかり鬼滅の刃で稼いでいるのかもしれない。

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