令和四年岸和田地車祭禮の通常曳行、通常開催が決定し、3年ぶりにバリアブレイクプロジェクトのまち歩きも復活することになった。もちろん見物人が少ない2回目の試験曳きでの開催だが、あの“岸和田だんじり祭”である。常識的なまち歩きとは全く環境が異なり、この状況下で4年間にわたって開発した車いす利用者のまち歩きガイドのノウハウを、少しだけご紹介しよう。
このガイドの若手人材を育成する立場で…
実はこのプロジェクト、後継者の育成を喫緊の課題としてとらえており、このガイドの価値、意義深さを伝えていくことになった。ご承知のようにレベルの高い観光ガイドは観光産業への参入として最もハードルが低く、飲食、土産物店、宿泊産業にとっても付加価値を高めるうえで有効だ。即現金化できるし、感謝され、やりがいもある。
・「岸和田バリアブレイクプロジェクト」
https://kbbp.org/
できれば大学生など若者に参入してもらい、超高齢化社会に備えるうえで、プロガイドを養成したい。
距離が開くという課題
最も意識するべきは、一人ひとりの距離が開くということだ。素人ガイドは先頭でしゃべるだけという方をよくお見かけする。しんがりを配置することで、安全が確保される場合、ガイドはどこでも自由に動き回るものである。私の場合、カヌーガイドの経験上、むしろこれは当たり前だ。
しかし、これが車いす利用者では無理が生じる。ハンドマイクをもってしても最後尾には声が届かず、危機啓発さえおぼつかない。そこで…ずいぶん昔、富裕層のお年寄り対象の「おとな旅 神戸」で導入したのが…
イヤホンマイクという便利グッズ
イヤホンマイクを使っている。レンタルで少々高額だが、それだけの値打ちはある。周波数をあわせれば前後50mは声が通る。注意喚起もらくちんだし、声高に叫ぶ案内はほかの方に失礼だ。聴覚障害のある方には全く効かないが、お上品な道具と考えていただきたい。
ミニFMへのトランスミッター送信、Bluetoothでの受発信、リモート会議システムなども検討できるが電波法と個人情報などのからみで実現に至っていない。ヘルメット越しに20人ぐらい通話できる、海外のようにはいかない。
真ん中より前…ガイドの位置
前方の安全に目を配りながら、隊列の真ん中が全身を使ってのパフォーマンスを含めてわかりやすい。ここで面白いのは案外車いす利用者、事故リスクは少ない。前方からくるクルマや自転車にとっては、視認確認が当然可能。参加者は雨風に耐えれるギアを持っているし、水分補給やトイレについても日常的にお慣れになっている。
むしろ、道路の段差や傾斜のある坂に気を配りたい。介助者は付いているものの必ずしも車いすの特性を理解しているとは限らない。車いすの重さ、スピードはまちまちだ。20kmぐらい出せる奴もある。ストレチャータイプは回転幅を意識する必要がある。注意点はそんな感じか。
ファーストエイドキットは最小限で済む
だれか参加者の車いすに縛り付ければらくちんではあるが、それは失礼。ガイドひとり分のファーストエイドキットは最小限で済む。濡れティッシュ、水、化膿止めのドルマイシンかテラマイシン。消毒液は傷にダメージを与えるので厳禁である。
絆創膏は良くなったと実感しており、アメちゃん同様に心理的効果が大きい。
ちなみにこっちは私のアウトドア仕様。意外に出番があるのが刺抜きだったりする。やはり野外では目薬や体温計ほか重装備だ。くれぐれも治療行為は本人承諾のうえ、緊急的な場合に限る。私の場合は「○○あるけど使います?」とお伺いすることにしている。
こんなノウハウもある
車いすからの視点は当たり前だが、低い。間に見物人が立ち見などしているとお手上げだ。ではどうするか?ズバリ傾斜を利用する。これは一人ひとりの間隔がとれることが前提だが、バリアブレイクプロジェクトではこの手法にて“迫真ヤリマワシ”見学に使っている。この方法で曳き手や後梃子、キャッチマンの息づかいまで伝わってくる。
と…今回はここまで。弊社の場合、まち歩き以前にアウトドアガイドという場数を踏んできたので、それに車いす利用者を組み入れたものになる。これ以上ご理解したい場合は…お仕事としてご発注のほど。ガイド養成、承りましょう。
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