2011年10月3日より半年にわたって放映されたNHKの朝ドラ「カーネーション」。東日本大震災の影響が深刻化するなかで制作は進み、舞台地となった岸和田市での撮影も始まります。圧巻は京都東映太秦映画村でのロケでした。岸和田市の観光サイトを管理運営している私は地元も盛り上げとロケの安全な進行を見守ることになります。観光庁長官賞受賞につながった岸和田市の健闘について不定期連載しております。全国のフィルムコミッション、ロケ受け入れ市町の方々の一助になればと思います。
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NHKの公式発表と東日本大震災との微妙な広報バランス
4月27日にNHK大阪放送局にて主要なキャスト発表が公式に行われ、徐々に新作朝ドラの輪郭が見え、また地元でも話題に上るようになります。しかしまだまだ東日本大震災の影響は深刻化していくなか、もろ手を挙げて愉快な情報はできませんでした。
現在の新型コロナ感染症対策、緊急事態と同じく自粛ムードが漂います。そのなかで岸和田市内の祭禮関連団体が一堂し、東北を応援しようというムードが高まりました。写真はそのときのワッペンで、だんじり曳行する方々が法被に装着してくれることになります。どこかで「カーネーションを盛り上げることで岸和田はもちろん、日本全体のムードも変わる」といった意識が芽生えます。これは大変ありがたかった印象が残っています。
岸和田カーネーション推進協議会通信の発行
スマホ以前…デジタルに接近機会の少ないお年寄りや子どもたちを想定し、岸和田カーネーション推進協議会通信というA4カラーのニュースレターを発行しました。市の広報誌に同梱いただくという異例のもです。月刊で放映後も含めて2年以上続けました。
これは朝ドラを“ステップとした”まちづくりを強く意識したものであり、推進協議会の予算(新規補正していただいた)を活用したもの。大河ドラマの舞台地などにおいてもこういった情報誌の継続的な発行は珍しく、もちろん事前にNHK広報にチェックしていただくわけですが…「なんで岸和田はこんなに仕事を増やすのだ!」と御怒りであったようです。
なお、朝ドラ関連情報発信サイトは、放映終了後すべてクローズする約束なのですが、このニュースレターのバックナンバーはすべダウンロードできます。
・「岸和田カーネーション推進協議会通信」岸和田市公式
https://www.city.kishiwada.osaka.jp/site/carnation/tusin.html
ロケが本格化。NHKのスケール、スピードにおののく
京都東映太秦映画村においてだんじりを曳行するするという計画は、実は着実に動き、五軒屋町の皆さんがかつてない撮影協力を承諾しました。ドラマ内では象徴的に何度も登場するシーンになるのですが、だんじり自体は神事に伴う行事であり、他の市町と異なり“めったなことがない限り”祭禮日以外は曳行しません。また、祭禮関係者数百人規模のエキストラ出演であり、それらを遂行したNHKおよび五軒屋町のご努力はすごかったと思います。
このあたりは以前にもご紹介した岸ぶらのルポルタージュがくわしく紹介しています。
・「どうするカーネーション<ロケ開始>」岸ぶら
https://kishibura.jp/blog/umeda/cat156/carnation/page/11
なお…太秦ロケは5月22日。午前中はひどい雨でしたが昼からは奇跡的に回復。早朝から深夜にかけて行われました。五軒屋町のこども会の遠足も「知ってか知らずか(笑)太秦」同日、このロケ現場に来ておりました。撮影設定の時代には子どもや女性は曳行してませんでしたので出演はないわけで…
プレス公開も含みつつ五風荘、弥栄神社ロケ
とんでもないスピードでロケが続きます。5月30日、五風荘でのワンシーンのみの公開プレス発表を含みつつ、一日に離れた2か所でロケが始まります。私の全く知らない、感知できていないなかで撮影交渉は進んでいたのでしょう。特に五風荘は文化財であり、さまざまな機関との調整があったはずです。どこか、岸ぶらわたなべにはわからないようにといった“あっりがたい気配り”があったような。
ただ撮影に関して、NHK大阪放送局の配慮は素晴らしかった記憶があります。機材の搬出入、配線、レイアウトなど細かな点で感じ入りました。何度もメールでけんか腰になっている広報担当者と現場ですれ違うのですが、岸和田を大事に思ってくれているスタンスがあり、仲よくせねばならんなと反省した次第です。
大急ぎで春木の弥栄神社へ移動。主要スタッフ、キャストの移動だけで昼飯抜き。すでに前入りしている、もう一つのロケ地へ。社叢のだんじり小屋はすでにスタンバイしてました。幼少の糸子を泰三兄ちゃんが内緒でだんじりの屋根に乗せてにやるシーンです。実は地車文化的これもタブーであり、簡単に実現できるものでは決してないのです。
なお、このだんじり小屋がなぜ選ばれたのかというと、かなりの数の小屋を見てきた(驚)なかで、比較的木造構造が残っていたからという。ADさん美術さんたちが調査されたのである。むろん、機材やスタッフのバックヤードやユーティリティーのチェックなど「ロケ地に迷惑をかけない」NHKの姿勢、スピード感は恐れ入りました。
番組公式ロゴ利活用の募集
さて…話を岸和田カーネーション推進協議会に戻します。5月27日、岸和田商工会議所大ホールで公式ロゴ仕様の商品開発にかかわる説明会が開催された。100数社の参加があり、公式ロゴ仕様についてのルールやコミッションのくわしい解説が、NHK広報担当者とNHKエンタープライズ担当者からあり、地元の各種メーカーや小売業者、商店街幹部などが詰め寄った。もちろん、動員については推進協議会はもちろん、商工会議所、観光振興協会も全力で行っていました。
町紋など意匠を小粋に使いこなせるまちである。そのルールや商標登録に関してはおおよそ理解してもらえるので、地元経済への直接的な影響があると考えられ多くの賛同、商品開発を期待しました。
しかし…地元からの利用申し込みは結果的に数社。近隣市町からの申し出のほうが多かったという残念な結果になりました。少なからずこれはショックでした。
カーネーション朝ドラへ聖地へ。推進協議会稼働からクランクインまで
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