観光の専門家として、さまざまな地域で紹介されると「ウチには何にもないですので…」とお伺いするケース。10中8~9なのです。まあ、奥ゆかしい地方自治体の方々であり、無理もないわけですが、10中8~9、何かを見つけることができるというのが事実でして、その観光資源とは?見つけ方、売り方を少し紹介します。
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見た目にすごいものはすごい。なのに売らない理由
Y市のシックナーですね。見つけたときには存在感に、こけてしまいました。実はほかの資源である「木彫」をどう売っていくかというご相談だったのですが、木彫とY市の接点が弱い。そうではなく、鉱山としての遺産を出すべきではないかと提案しました。
ガバナンスからは、みごとに忌避されました。マイナスの歴史であると。確かに強制労働の悲惨な歴史が前面に出ることになり、不名誉とお感じになったのかもしれません。しかし、それゆえに発信することが大切だと念を押したのですが。
シックナーは解体予算がつかず、その後10年ほど放置されましたが、ガバナンスの姿勢が180度転向して、現在は観光名所になっています。「まちの恥」は「ほこり」であるとなぜ気づかないのか?私の提案が早すぎたのか?
動き出すと、周囲への影響が大きい
「なにもない」という市町「なんでもある」わけです。観光資源に人が集まればよしとする考え方は否定しますが、節度のあるにぎわい創出は価値があるとみています。感染症が広がった現在、長期的にそういった潮流が大事でしょう。
写真はH市の案件。隣接する三つの漁港にはそれぞれ地元民対象の鮮魚店があるなか、域内消費だけに意識しすぎ、存続も危ぶまれていました。このまちの観光振興計画を提案するなかで、三つの漁港を試食、飲食できるコンテンツを説きました。
しばらくしてから3つの漁港のうち2つの漁港で、それまで試されていたカキ養殖が成功し、都市部なのに「カキ小屋」が稼働し、人気スポットになりました。、これは単純にあるものの組み合わせではありますが、マネとかそういうものではなく、地域経済にあたらしい風が吹くわけですね。
残った一つの漁港には「ウシノシタの干物とトンカチセットで販売」をお勧めしたのが、申し訳ないのですが、参入を遅らせているのかもしれません。
いつでも人が来る…そこをさらに売る!
s町の著名な神宮のケース。独自の美味しい水もあることで「ほっておいても人が来ているところ」というのが地元の認識でした。また、特定宗教という観点でガバナンスは消極的。実際宮司、禰宜と話すと参拝者は提言していると。
いろいろ繋がりを探すと、この地でオーガニック系のフリーマーケットをやりたい若者や、シンボリックな神域で中高年が集まるスペースとしての利活用を要望する方もみつかりました。ほなやりましょうや、ということで展開したとこ私がこの地を去ってから盛り上がりだし…(コレラ案件はすべて、私が去ってから盛り上がる)現在はフリマこそ再開できないが、軌道に乗っている。
既存の観光資源であっても、背中を押さなくてはにぎわいは起こりません。売り方というよりは、主体的に関われる人々をくっつけることが最優先なのです。余談ですが、来年この神宮は大河のゆかり地になってしまいます。ものすごく心配しております。
定番は正しく行う。やはりそこには人が必要
そもそも著名な観光地ではありますが、地元の方々への経済的な影響が少なく、どこか観光に否定的だったI町。いくつものまち歩きコースを提案するなかで、不定期で行われる「寅さんロケ地ツアー」が小さな話題になっている。
少人数で同じ目的を持った方々をご案内するまち歩きは、今後重要な観光資源になるでしょう。このまち歩きを全面的に支えて頂けたのが、元商工会議所のNさん。徹底的に撮影カットを分析し、マニアを納得させるまち歩きを実践されています。
「聖地観光は必ずやるべし」と訴えた甲斐がありました。マップを作るときに、松竹さんから写真使用の快諾を頂けたことが忘れられません。これも皆、人の関りです。いわゆるガイドの役目が不可欠なものばかりですね。その場所にあるだけのものなら、資源にはなりえません。
観光資源とは、高度化とDXの狭間で
立ち入り禁止にはなっていないトンネル…春前のK村とT村の境にある水道です。アニメに出てくるような巨大なつららがあり、びっくりしました。もちろんこれは観光資源として認識されていませんが、今後そういった可能性はあります。
訪れる側の観光客は目が肥えています。おそらく単純に「映え」を意識する方々も含め地学的データや、歴史、科学について紹介できるエビデンスが不可欠になるでしょう。ちなみにここは地元では親しまれた場所であり、背中を押せば、人気スポットになります。T村からは容易にアクセスできます。
見向きもされてこなかったモビリティー
パーソナルモビリティーという観点では、今後激変が予測され、観光動態は変化します。すでにEバイクを積極的に活用した事例はたくさんあります。考え方を変えてみてはいかがでしょうか?ミカン畑や杉の林を…ありますよねパーソナルモビリティー。
林道索道のモノレールですね。実は自由度の高いコース設計ができます。最近の技術では3トンぐらいの重機も運べるほど、精度は高くなっています。実は傾斜がきつい神社の参道や、マンションなどでも実用化されている実績は多いのです。こういったアクセスを視野に入れることで、隠れた観光資源の価値は高まります。
高齢化対策として見られていましたが、杉山、みかん畑のうえから雲海を眺めるなど…農業、林業に従事されている方々にとっては日常です。ソーラー電源に切り替えれれば、もっと良し。
食の観光資源も、考え方次第
ずいぶん昔に提案したケースですが、肥料用の魚粉というものがあり、漁港近くの加工場で生産されるケースが多いのです。W県のケースですが、これにニンジン、ワサビ、サンショウなど野菜のドライ素材を自由に組み合わせて、マイふりかけを作るコンテンツもありました。
新鮮度を売りにするだけではないのですね。このプログラムに関しては、ガバナンスのほうがついてくることができず、お蔵入りしましたが。産業6次化という観点では、まだまだ使える技法ですね。
観光資源については、それを売り出すうえでやはり旧態依然とした壁があります。紹介した事例にみられるように、私が直面して関わっていたときにはレールに乗れず、そのあとで花が開く…役割はそれなので仕方がないのですが(ウチ儲からんがな…)、ガバナンスを説得させる、協力をさせる地元の方々の存在が重要です。その気にさせる…ここが最も大切なのでしょう。
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