日本におけるアウトドアブームのターニングポイント、POPEYE創刊が昭和51年(1976)年。そこからバブル終焉までが第三次アウトドアブームでした。その後のバブル終焉からマーケットや、人々の動きを検証していきます。ここからは特に、現在活躍中のメーカー、輸入業者、施設管理者などに参考にしていただければと思います。
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第4次ブームはバブル終焉から。そして転がるように激減
第4次ブームは激減、そしてアウトドア業界の暗黒時代のはじまりでした。その現状はつい最近まで続きます。本論はそこから現在の“もしかしたら第五次アウトドアブーム”の傾向、可能性を探るところまで進めたいので、一旦リーマンショックまでを区切り、あえて不振ではありましたがこの時期を「第四次ブーム」としています。
表は独自に入手した輸入艇を含む国内のカヌー出荷台数で、競技艇は含みません。、カヌー単体ではありますが、アウトドア業界マーケット動態を如実に示すものだと思います。集計開始は平成2年(1990)で出荷台数は17,167艇。少し前の記録があれば20,000艇ぐらい出荷されていたと推測でき、これが昨年の令和2年(2020)では4,677艇まで落ち込んでいます。30年で1/4まで落ち込んでいる…これがアウトドア業界の現実なのです。
カヌーは専門店での販売が前提とはいえ、取扱店舗は増加しているにもかかわらず、ブームと呼ばれるわりに縮小市場。減少傾向とはいえこの時代を語らずには現在の暗黒時代に対して理解が進まないので、出来事順にご説明します。
精神性、哲学を拾いつつもモノ的発信は意欲をくすぐった
さまざまな出版社から専門誌の創刊、既存誌のアウトドア特集が目白押しで、雑誌の表4(裏表紙の広告)はほとんどといっていいほどRV(レジャーorレクリエーショナルビークル)でいた。まだ自動車業界には余力があったし、それまでのあそびの多様化が車の活用法を変えていました。それゆえにアウトドアメーカーや輸入販売企業は、右肩上がりを想定していました。しかしこれら雑誌は、時間とともに消失します。
リゾート法は宿泊&レジャー施設を潤わせた
バブル終焉後も新しい宿泊施設、レジャー施設は設置、運営されます。特に修学旅行にける「マリンスポーツ体験」は巨大なドル箱でした。カヌーに関していうと一度に40艇、50艇とそれに関する備品が売れるわけです。実はその後15年ほどたって当地のマリンスポーツ提供施設で事故が多発することになり、バブル期から以降に正しい哲学や精神もセットで提供するべきだったと悔やまれてなりません。
施設による大量発注にアグラをくんでいた…どこか現在のインバウンド需要に似ています。
週休二日の大きな影響が市場縮小をなだらかにした
しかし救われたことに段階的に定着したのが週休二日制定着で、一泊二日のキャンプ需要を押し上げました。ファミリー層の増加です。このころ、テントだけではなくタープというユーティリティー空間の利活用が定着します。荷物が増えればRVも欲しくなりまとはいえ景気は低迷しているなかで(説額や精神性を含む)専門的な道具は要望されず、使い捨て感覚でホームセンターなどでの消費が増えました。
この時期に全力で量販店での販売に注力する企業と、登山を含む専門的な領域に専門特化するメーカーや小売店と見事に分かれていきました。
ようやくアウトドアガイドが認知される
ある程度リゾートあそびを体験し、そこでアクティビティーを経験した方々が自分自身であそびを継続すべく、定期的なサービス提供を求めはじめます。リゾートで最初のあそびを教えてくれるのはインストラクター。さらにそれを包括的にご案内して一泊二日、つまり数日間のアウトドアライフを提供するのがアウトドアガイドで、スイス、アメリカ、オーストラリアなどが先進国でした。
動画はアウトドアあそびの会員制スポーツクラブで、管理運営していた私がガイドをしているときのものです。思い出されるのはバブル終焉後、週休二日で参加できる方はまだ一部で、会員には公務員の方が多かったのも印象的です。多くの方がRVにのって参加されていました。こうやって地味ではありますが、日本各地でアウトドアの哲学や精神性、自然との立ち位置などを説明できる生業(アウトフィッター)が拡散、定着しはじめました。
新興国の製品が流入しリーマンショック発生
今もそうですが…安心して使えない商品が多くホームセンターに並びはじめました。BBQ用の炭などはまさに続いていますね。その一方で、マーケットでは先に述べた「登山を含む専門的な領域に専門特化」の企業における販売成績が、ブランド力が高いわりに伸びない現象が明確し、欧米ではメーカーのコングロマリット化が進んでいきます。個性的なメーカーのデザイナーや開発者はなじみ深い会社を飛び出して、新ブランドを作ったりもしていました。いわゆる市場のグローバル化です。
すでに「本当に欲しいものが手に入りにくい時代」のなかで、リーマンショックが勃発します。もちろん、コングロマリットは大打撃を受けます。そのなかでサプライチェーン的な役割だった新興国が市場規模を拡大していきました。また、消費の減少は可処分所得の少ないファミリーなどを直撃し、アウトドアあそびの本質は変化します。
そのあたりから成長産業とは程遠い暗黒時代へ
ここまでがリーマンショックを節目とした、第四次アウトドアブームでした。すでにアウトフィッターは経営が成り立たないまま、サービス停止を余儀なくされていきました。アウトドア業界においては絶体絶命的ななか、イノベーションはありました。登山・ハイキング人口の増加(費用が安価)や、女子アウトドアなどが話題にはなりました…。この現象が、どこかで異種配合したのでしょうか?
このころに予想しえなかった市場の動きが発生します。一つはSNSなどを媒体とした若者の参入で、アルコールバナーが代表的でしたが「使いこなすには一定の技術が必要」な道具類のフェティッシュな流行です。なぜか金属系が多いのですが、セレクトショップ的な実店舗、ネットショップが増加します。今でいうところの「映え」に近いといえるかもしれません。
それと…私が注目しているのは東日本大震災以降の自粛リバウンド的な販売増です。両方とも微々たる変動ですが、防災用品としてアウトドアグッズが売れた…だけではないでしょう。これらがはたして、第五次アウトドアブームにつながる着目点になるのかどうか…ではここからは次回をお楽しみにお待ちください。
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