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カーネーション朝ドラへ聖地へ。制作発表から表敬訪問まで

朝ドラ史上最高傑作と謳われる「カーネーション」。2011年10月3日より放映されたNHK朝の連続テレビ小説です。舞台地となった岸和田市の観光サイトを管理運営している私はそのとき、何を考え、どう動いたか?また、当時はロケ地や舞台地に対する制約が多く、その後の岸和田市の活動がNHKの姿勢が大きく変動するキッカケにつながり、後に岸和田市は観光庁長官賞を受賞します。このドキュメントが全国のフィルムコミッション、ロケ受け入れ市町の方々の一助になればと思います。

2011年1月15日、新聞で突然制作発表された。

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岸和田市への何の知らせもなく突如新聞で知ることになり、岸和田市役所に飛んで行った記憶があります。青天の霹靂です。観光セクションではよかった、よかったとサラリとお話している方が多くゾッとした記憶があります。みなさんも新聞で見たという状況。ロケ協力や地元経済への影響…オンエアは同年9月末の予定(しかし遅れる。くわしくは本文にて)ではあまりにも時間がなさすぎるゆえ、のんびりしている暇はない。実際NHKの制作発表は現在もそのようで、あらゆる準備を整えたうえで発表されるようです。

後に知ることになりますが“岸和田”“カーネーション”といったキーワードに関するドメインは、この3か月前にすでに取得されておりました。地元の動きを予測して、商標などをコントロールする目的なのでしょう。すでに緊急事態でした。私といえば、朝ドラ、NHKの影響を関係者に知ってもらうために15日夕刻には「朝ドラ」、「大河ドラマ」のロケ地、舞台地の取り組みについてネットで調べ上げ、全部PDFにして当時の部長に毎日送り、自分なりのミュレーションを整えて、現在放映中の「てっぱん」の舞台地、尾道へ2月8日に走りました。

ロケ地、舞台地慣れしていた尾道市

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古くは小津、大森三部作で知られる尾道は多くのノウハウを持っており、感覚が異なっていました。市役所や周辺の尾道ラーメン屋でヒアリングをすると、「○○(ほかのロケ)のときよりちょっと客足低かったかなぁ~」とか「尾道焼きは良かったんとちゃうか」といった反応。とにかく嫌われた現象としてNHK広報がロケ地や撮影場所の明記を拒否したその体制と推測できました。NHKとしては「その周辺でトラブルがあった場合、責任を負いかねる」という理由で…今では考えられませんね。

上の写真は朝ドラ放映に伴って作り直した観光マップですが、苦しいところでロケ場所は「カメラのピクト」が挿入されてありました。ギリギリ抵抗して、この表現で落ち着いたとのこと。その代わり番組ロゴを使わない「応援ステッカー」や「てっぱんのまち尾道」といったポスターなどの作成などでどうやって「かわす」か?さまざまなノウハウを伺いました。

安曇野市はそばが売れる、松本市ではNHKを気にしていないと…

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続いて観光課、観光振興協会職員とともに2月17日、雪が降り積もる信州…安曇野市、松本市へ。道中の列車のなかでTwitterネタで「ヒロインは尾野真千子」とつぶやかれ…正直愕然としました。新人ではない…また、個性が強い(もちろんこれは思い込みだったことは後に触れる)。頭を棒で殴られたようなふらふらする状態で安曇野へ到着。
おや、あと一か月半で放映開始になる「おひさま」のPRが少ない。

 

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蕎麦屋などにも「おひさまそば」などは見受けられず(後でキャンペーンやってましたけど)、放映直前の舞台地がこれでいいのかとギシンアンギで市役所で話を伺うと…通し番号の付いたポスター、その裏には一枚いちまい設置個所、枚数の登録、のルールが記された実情でした。さらにこのポスターは放映終了後「要返却」とのこと。厳しすぎる時代でした。

松本市では「NHKはめんどくさいので、同時に進んでいるほかの映画やドラマに注力する」ときっぱり。確かに写真の盗用やポスターのコピーが一般的になり始めたころで、NHKが過敏になりすぎて時代でした。しかし尾道にしろ、安曇野、松本にしろ日本を代表する観光地であるわけで、そういった対応に拮抗も可能ですが、はたして岸和田ではどうなるのだ?また頭がぐらぐらして帰阪しました。

カーネーション推進協議会を急遽、立ち上げる

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事情を岸和田市の偉い皆さんにお話しする機会をいただき、岸和田市が当時観光地としては未発達であり、ここで観光客が突然大勢やってきても観光消費を取り逃がすことになるし、市民に不快感を持たせる可能性もある。できることはまず朝ドラの舞台地としての価値、理解共有(実はモデルの三姉妹は地元ではちょと…)が必要であると訴え、行政、産業にかかわらず祭禮団体、町会、婦人会、文化団体などを含めとにかく組織体を立ち上げることに専念しました。

3月1日、浪切ホールです。三姉妹の方々からビデオメッセージもいただき、出席者は鼓舞し、さすがに危機感を感じたようです。これを取り仕切った当時の部長さんのスピード感のある動きには脱帽しました…。正直なところ、過去の朝ドラや大河を受け入れた市町の動向レポートは役立ったと感じています。これも後に聞きましたが、制作発表の後、こういった組織の立ち上げを2か月以内に成しえたのは岸和田がはじめて…ということでした。こういった異なる組織が短期集中的に集まる力は、岸和田独自のものでした。

NHK、BKにてヒロイン発表記者会見、その後えらいことに

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この後、何度も足を運ぶことになるNHK大阪放送局でヒロイン発表記者会見に出席したのは3月7日。一般新聞、スポーツ紙、芸能誌などの質問、やり取りの作法をここで初めて学びました。また、NHK広報の基本的な立ち位置、優先順などを読み取ろうとしましたが…私には尾野真千子さんの一挙一動が気になって仕方がありません。大丈夫やろうかと…

ヒロインのモデルであるコシノアヤコさんはお会いしたことがないのですが、岸和田に着任したその日に「お別れの会」が浪切ホールで行われ、長蛇の列ができていたことを覚えています。

そんなことに悶々としていたら東日本大震災が発生します。日本がどうなるか?深刻な状況を報道で追いかけながら、この状況で…カーネーションが、岸和田市がどうなるか?もうたまらなくなっていました。

東日本大震災直後のヒロイン表敬訪問は?

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放送は例年のパターンから少し遅らせて10月3日からスタート。とんでもない社会情勢のなかで朝ドラは進めるとの判断。「それだけの作品が準備できている…」というNHKの意識の表れだったのでしょう。これは結果的に大正解でした。

定番の舞台地首長へのヒロインによる表敬訪問…大勢のメディアが明るい話題を提供するために岸和田市庁舎に集まったのは、
大震災から一か月後の4月11日。普通は市長室での面談形式であるところ…エレベータから下りた尾野真千子さんを迎えたのは職員による熱い拍手でした。後日プロデューサーさんからは「あんな歓迎を受けるとは思わなかった」と聞いています。

それらをダイレクトにかつ、喜びを素直に表現しづらい時節のなかでうまく“控えめな笑顔”やり過ごした尾野真千子さんを見て…いやこれは案外、新しいタイプの朝ドラ、そしてヒロインになる可能性もあるのか?と、少しだけ安堵しました。

この連載は不定期にて継続します。次は七転八倒の推進協議会、そしてクランクインまでを振り返ります。こうご期待!


「カーネーション朝ドラへ聖地へ。推進協議会稼働からクランクインまで」

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