2020年には大丸心斎橋店北館で心斎橋パルコが復活している。1990年代にこのあたりで活動していて勝手知ったる心斎橋。遅ればせながら心斎橋パルコを覗くと、できの悪いブレードランナーの世界になっていた。
バブルを経て、渋谷カルチャーの拠点
かつて堤清二が率いた西武百貨店を中核としたセゾングループの象徴ではあったが、堤自身は運営にはかかわらず…結果として時代の寵児的な百貨店、ファッションビルであった。
従来型の百貨店ではなく、ポップカルチャーやアートがファッションと共存する構造は、業界の話題であり続けた。やがて現在、さまざまな企業による買収劇の結果、J.フロント リテイリングの100%子会社である。
個性化が“没”個性化につながる今、百貨店は?
パルコの個性的な性格は現在も変わらず。しかし、時代は大きく舵をとった。2020年改装、オープンだったからだろうか心斎橋における旺盛なインバウンド消費を狙った姿が、コロナで吹っ飛んだ。その姿が見ていて涙ぐましい。
できの悪いブレードランナー的なまち…映画ではフィリップ.K.ディック「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」原作を、具体的には日本色っぽいテイストにリドリー.スコット監督が解釈したもの。プラザ合意前、1982年公開である。心斎橋パルコはそういうテイストをさらに“くずした”ものであり、インバウンド活況なら大うけしたか知れない。
日本を模した疑似商業施設
しかし現在この姿は異形であり、滑稽な現在遺産だ。中国では各地に日本を模した疑似商業施設ができているというが、それの先駆者といえるだろう。
心斎橋という立地条件から、地下の食堂街はそれなりに盛況。しかしながら同様店がアメリカ村や鰻谷に並ぶなか、商業施設としての新規性はなく、利便性だけが見える。百貨店、ファッションビルは滅びたとするなら、令和に残った遺跡がここといえるかも。つまり、新たな業態変化について行けなかった塹壕である。
好立地の巨艦店はどうかわる?
ネット中心のライフスタイルは、すでに百貨店の活用方法を変えている。フロアのインデックスではこのように「知らんブランド」を検索し、先に単価帯や商品構成をチェックする。
同調するように「購買行為をやめた」店舗も増えている。商品説明とカウンでリング(もしくはカスタマイズ)だけを行い、購入は店頭でプロパーのネットショップで清算。お金のやり取りがない分、能率は良い。しかし百貨店でのお買い物の価値はどこへ行ったのか?
少し面白かったのは試着室で、男性女性は区切られていない。LGBTQの配慮と思われるが、トイレはまだまだ。
百貨店は大規模なキャンプ場になるのか?
ネット通販の浸透は異様に早く、そのうちアバターがお買い物をする3DCGの仮想空間メタバースが台頭するだろう。それほど遠い未来ではない。
そのときの百貨店の姿を想像する…百貨店ではなくシネコンでもいい。ホテル?温浴施設?ゴルフの練習場?フィットネスジム?車を乗り付けることのできる広大なキャンプ場?
なんだかキャンプ場が一番しっくりくる。とてつもなく残念である反面、野外のアウトドアファンが減るならそれもいい。
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