写真はニュージーランドマオリの方々の伝統的なあそびトボッツガン。海上でなく雪上でもない、坂を使ったボードあそびです。あそびには人間の身体能力やコミュニケーション力、さらには協調性を高める価値があり、それは当たり前のように世界に共通しているという事実を「民族遊戯大事典」は示します。
民族遊戯大事典、1998出版ですが購入できます
ハッキリ言って私のネタ元蔵書の一つで、体験学習をはじめアウトドアサービスの折によく話をします。「世界なんちゃら…」といったテレビ番組が追い付いけない挿話になるから。またこの大事典、めちゃくちゃ取材をされ収集分析されており、精度が高いのです。
「民族遊戯大事典」で検索してください。少々お高いですが、弊社ではキャンプ場ほかでの体験プログラム提供のオハナシ、ご相談をよくいただきますが、最近は請け負う気がしません。なぜなら依頼のレベルが低すぎるから。こういうご本をご自身で購入されれば、新しいサービスも生まれるでしょう。
あそびのタイプは分類が可能
本書の冒頭はタイポロジー、あそびの分類で始まります。玉(石けり)、格闘、綱引き、カードなど。すでにこの時点で「同じあそび」が世界か各国にあるという事実に気づき、また貴族や宗教のスタンスなどがわかっていきます。
たとえばじゃんけん。グーチョキパーの“三すくみ”方式は日本独自の文化という発言を、偉い先生がしているのを聞きつつ上の写真はインドのじゃんけん。左から人間、ゾウ、アリということで三すくみです。何か壮大な生態系を思わせます。その下はなんと“五すくみ”方式のマレーシア。石、ピストル、鳥、水、板(木/森?)と、一時の政権を思い返すと、ヒトの象徴がいつの間にかピストルになっているあたり…厳しさが伝わります。
力石(力石徹ではない)。社寺や祠で見かけることは日本国内でも少なくありません。写真はバスクの力石ですね。この文化は身体能力の違いを競うだけではなく、聖なるものへの挑戦(結果的には神事などになるのか)、やがてグループ競技へと転換したものと考えられます。石投げを経て、石けりに転嫁するのですね。それが獲物(収穫物、または敵の首?)の投げ合い…お判りでしょう、フットボールなどです。精度を高めるとボールスポーツ、の世界へ…ゴルフやポロはわかりやすいですね。ハイソサエティーなものに変わります。偏芯球を使ったローンボウルズなどは象徴的です。
さらに国別で調査、分析。すごい。
ウイグルの回転ブランコ。韓国朝鮮での巨大ブランコ文化は有名ですし、これがまたどういう経緯を経てか戦前戦後の日本の海水浴場にも多数出現しました。新聞社や鉄道会社主催の興行として。
このあたりになると商業的な意味合い、つまりは有償のテーマパーク化が進んでいったものだと想定できます。著名なリゾート施設のビーチにブランコが設置されているのを見て…現在は「ハイジ」のイメージなのかなと感じ入りますが、文学作品にブランコの登場は少なくありませんね。どこかにブランコの“物理的な楽しさ”たとえば無重力感が人をとれるのかもしれません。
しかし争いにも使われるケース
おいおい英国貴族が8世紀に?と感じ入るのが投石器です。日本では印地打ちなどともよばれています。自分自身何度も試し、アウトドアサービスの“雨待ち”などの焚火の場でやって見せたりするのですが、恐ろしいほど飛びます。しかしなぜ英国貴族が?という点では、いわゆる武器だったのではないかと単純に考えてしまいます。戦国武将も使ってますよね、弾薬節約にもなりますし。
あそびもどこかに戦闘に転用されていく部分があったのでしょう。
ここからは本書を仕入れてください。目の前の焚火に触れていながら、他所の焚火映像をスマホで鑑賞するようなお客様相手のグランピング施設の皆様方。
いまさら「自然とのあそび方」とか「俺さま流キャンプ」とかの配信、出版をされている方々にも。民族遊戯大事典の改訂版の出版を待望しています。その改訂版で…あぁ、ピストルが増えていたらどうしましょう…
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