敬称というヤツは難しいと思います。特に“先生”というヤツは。役職としての先生は全く問題ないと思うのですが、それ以外…敬称としての先生については、やり取りを聞いていても気持ちの良いものではありません。私でも講演などに赴くと、そう呼ばれる場合もあり「頼むから渡邉さん」にしてくださいとお断りしています。その件についていくつかエピソードを…
松竹映画のような“先生釣り”を体験した
もうずいぶん前の話。二まわりほど年上の俳諧師に知り合いがおり、気に入った島ができたのでということで二人して数日間の旅に出ました。隠岐島東前。なんでも俳諧師はそこの小学校でゲストとして2回ほど呼ばれたらしい。訪問してみたら確かに沖縄や瀬戸内とは異なる環境、文化に癒されました。
いい海なので著名な神社宮司とともに、三人でガシラの落とし込み釣りなどして楽しく過ごしました。
最終日近く、観光協会の事務局長がこられて「先生、この島は釣りが面白いんですよ、まだやってないでしょ、ご一緒しますのですぐ行きましょう!」とのこと、しぶしぶ私は付いていき、俳諧師と事務局長を眺めていた。
先生、竿はこれでございます。
エサは私がお付けしますので、先生は竿を持っていてください。
ほれ、こうやってアタリを待ちます…
おかしいなあ、いつもはすぐにこれで釣れるんですが…
もう一度、私がエサをお付けします。
あ、今のがあたりです!先生!グッと合わせてください!
合わせるというのはですね、こ、こうやって…
あ、かかった!先生お上手です、さすが!
さては太公望とか言われていませんか?
あ、もうちょっと、もうちょっと
あ、あぁ~ あぁ~
これが人生初の“先生釣り”でした。
この件は今でも俳諧師と逢えば、二人の笑い種になっています。ちなみにこの事務局長、私のことは「書生さん」と呼んでいました。
大阪府教育センターでの落語のようなお話
総合的な学習において「堺の自転車学習」を進めていたころ、その導入宣伝のために市内の先生方対象の研修会に乗り込んだ時のお話。メインの研修の後で、15分ほどプレゼンをさせていただいたのだが…その日の最初の受付、先生が、先生方を受付するという光景が忘れられません。
何度も訪問経験のある教育センターなのに、遅刻する先生は少なくありません。生徒には厳しいくせに…。そして出欠をとるうえで準備された名簿に、捺印が必要というなかで…
A)先生すぐに始まりますよ、先生急いでください。
B)申し訳ないです先生。
A)あっ先生、ハンコをお願いします!
B)あ、はい…(カバンごそごそ…)
その間ほかの遅刻してきた先生と、受付先生は同じやり取り中
B)先生、ハンコ忘れてしまったみたいです。
A)困りますよ先生!ここはサインはダメなんですよぉ~!三文判なんか近くで売ってませんし。
ごそごそ…
B)あっ!ありました、ありました先生!
A)はぁ~よかったぁ~先生!貸してください、私が押しますから。おっ…
フロアに落ちて、転がる印鑑。
A)とれますか先生?
B)拾えます、大丈夫です先生。
A)はぁ~、よいしょ(押印)。先生時間がない、急いで急いで!
B)ありがとうございます!先生!
まぁ、これは役職名としての話ですが奇妙な先生同士の会話というのは落語ですね。病院の世界でも、同様のことがあるのかどうかは存じませんが。
“社長”もまた同じで勘弁願いたい
大手企業の営業さんと話すと、やはり私の敬称として“社長”を使う方がおり、同様に「渡邉さん」を要望しています。そんな規模の大きな事業体でもないし、バブルのころ誰でも彼でも社長にしてしまう夜の店にもよくいきました。
実は敬称というよりは「蔑称」のように感じてしまいます。もちろん初対面の方やTPOによって私も敬称を使うことがありますが、当方がいつまでも社長とか先生を使い続けている場合は…悪いですが蔑称です。
(松竹映画「男はつらいよ」公式サイトより)
https://www.cinemaclassics.jp/tora-san/cast/
社長というとお亡くなりになった名優、太宰久雄さんのタコ社長です。しかし、翌全48作見ていただきたいのですが、案外「タコ社長」という名は出てきません(脚本に記載があるのかもしれませんが)。また、その使い分けが見事ですね。山田洋次監督は、シリーズ構成にて一貫しています。社長の使い分けが卓越していました。
ミスとかミスターとかドクターのほうが楽か?
英語はこのあたり簡単でうらやましいですね。CEOとか近年ややこしいのですが。軍隊などは英語で聞いていると、ついていけないときもありますけど。
とある案件で保守系衆議院議員のパーティーに出席して、陳情する機会がありました。ロイヤルホテルの大広間を全室使った大規模なもので、500人ぐらいさまざまな方が一堂してました。会場には大勢の先生がいたのでしょう。
壁沿いで眺めながら、一人ひとり「先生」を敬称として使っているのか、蔑称として使っているのかを考えると、やはり先生には魑魅魍魎パワーが少なからず存在するものと実感しました。
なお…私はどちらさまにも「さん」で対応してます。上下分け隔てなく。
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